相続分の譲渡について
相続分の譲渡について
播磨町(土山)の司法書士 北谷です。
今回は、遺産分割協議と違って、なかなか出番の少ない「相続分の譲渡」について考えみたいと思います。
実務では、共同相続人間の遺産分割協議での争いから抜け出したい人が用いることが多いと思います(相続放棄できない場合)。
まずは要件から、
1.遺産分割の前にしなければならない(民法905条1項)。
2.相続人、相続人以外の第三者のいずれへも譲渡できる。
3.有償・無償のいずれも可。
4.相続分の一部の譲渡も可能と解されている(少なくとも登記先例では可)。
次にその効果として、
1.積極財産と消極財産とを包括した遺産全体に対する譲渡人の割合的な持分が譲受人に移転する(最判平成13年7月10日)。
2.相続人以外に譲渡した場合、譲受人は遺産分割協議に参加できる。
3.債務も譲受人に移転するが、相続債権者には対抗できないと考えられる。
4.相続人以外に譲渡した場合、他の相続人は取戻権を行使できる(民法905条)。
5.効果は相続開始時に遡らない(遡及効なし)と考えられているが、遡及効を認めたような先例もある(後述)。
実際の登記手続きにつき、パターンを分けてまとめておきます。
1.共同相続人A.B.Cがいる(相続分各3分の1)場合に、AがBに相続分を譲渡
(1)共同相続登記がなされる前
直接B.C名義(持分3分の2B、3分の1C)に登記できる。(遡及効あり?)
【昭和59年10月15日民三5196号】
(2)共同相続登記がなされた後
A持分全部移転(登記原因:無償の場合は「相続分の贈与」、有償の場合は「相続分の売買」)でBに移転。(遡及効なし?便宜上?)
2.共同相続人A.B.Cがいる場合に、A.BがCに相続分を譲渡
(1)共同相続登記がなされる前
直接C名義に登記できる。(遡及効あり?)
【昭和59年10月15日民三5195号】
(2)共同相続登記がなされた後
AB持分全部移転(登記原因:「相続分の贈与」または「相続分の売買」)でCに移転。(遡及効なし?便宜上?)
3.共同相続人A.B.Cがいる場合に、AがBに相続分を譲渡。その後、BとCが遺産分割協議して取得者をBのみとした場合
相続を原因として、直接B名義とすることが可能。(遺産分割により遡及効あり)
【昭和59年10月15日民三5195号】
4.共同相続人A.B.Cがいる場合に、Aが相続人でないXに相続分を譲渡
直接X.B.Cの名義にすることは出来ない。(遡及効なし)
まず共同相続登記(A.B.C)をし、A持分全部移転(「相続分の贈与」または「相続分の売買」)でXに移転。
5.共同相続人A.B.Cがいる場合で、相続登記未了の間にAが死亡(相続人はa)。aとCがBに相続分を譲渡した場合
直接B名義に登記できない。(遡及効なし)
【平成4年3月18日民三1404号】
この場合、
①被相続人からA.B.Cに移転(原因「相続」)
②A持分全部移転でaに移転(原因「相続」)
③a持分全部移転でBに移転(原因「相続分の~」)
④C持分全部移転でBに移転(原因「相続分の~」)
となる。
この中で注意すべきはやはり5.でしょう。
同じパターンで、a.B.Cで遺産分割した場合には直接B名義にできる【昭和29年5月22日民甲1037号】ことと違い、数次相続によって相続人となった者の相続分譲渡には遡及効が認められず、時系列に従った登記申請が必要となります。
1.2のように、数次相続が発生していない場合の相続人間(同順位の相続人間)でのみ、相続分の譲渡の遡及効が認められているようです。
では、数次相続が発生した場合で、相続分の譲渡を受けた相続人が遺産分割協議をした場合はどうなるのでしょうか?
(上の例でいくと、aがBに相続分を譲渡。BとCで遺産分割協議してBの所有とすることとした場合)
これについては先例はまだないと思います。実際に申請することとなったら、事前に法務局と協議することになりそうです。
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