遺言の文言と不動産登記の可否
遺言の文言と不動産登記の可否
播磨町(土山)の司法書士 北谷です。。
今回は遺言から。
遺言書作成の目的は、遺言される方お一人お一人の事情もあるでしょうが、将来の相続人間の紛争の予防と自身の遺志をのこすことだと思います。
ただ、遺言書の文言が適切でないばかりに、その目的が達成できない場合があります。
たとえば、遺言者に妻と子がいるケースで、遺言書(自筆証書遺言)に「遺言者は、甲土地を妻が相続することを希望する。」と書かれている場合、相続人間で遺産分割協議をすることなく、遺言書を以って妻への相続を原因とする所有権移転登記が出来るかについて考えます。
まず、遺言の解釈及び効力について、重要な最高裁判例がありますので挙げておきます。
【最判昭和58年3月18日(要旨)】
遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書の特定の条項を解釈するにあたっても、当該条項と遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して当該条項の趣旨を確定すべきである。
【最判平成3年4月19日(要旨)】
特定の遺産を特定の相続人に「相続させる」趣旨の遺言があった場合には、当該遺言において相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情のない限り、何らの行為を要せずして、当該遺産は、被相続人の死亡の時に直ちに相続により承継される。
一般常識的に考えて、遺言者は甲土地を妻に相続させたい意思があることを見て取れると思います。また、昭和58年の最高裁判例もあります。
では、この遺言書を以って(遺産分割協議をすることなく)、相続を原因とする所有権移転登記を申請した場合、申請は受理されるでしょうか?
遺言書の他の部分の内容や、登記官の判断といったことがありますので断言は出来ませんが、申請はまず受理されないと考えられます(少なくとも、遺言書をつくり直せる状況であれば、受理されないものと考えるべきです)。
その理由としては、この遺言の文言では、甲土地を相続するか否かを妻の意思に委ねていると解釈でき、平成3年の判例における「相続による承継を当該相続人の意思表示にかからせたなどの特段の事情」に該当すると考えられるからです。
遺言書を以って登記が出来ないとなると、法定相続分に従って相続人の共有名義に登記するか、相続人間の遺産分割協議により土地の帰属(土地を相続人の誰の名義とするか)を決めるほかないこととなります。
せっかく遺言書を作成しても、少しの言葉の違いで遺言をされた方の思い通りにならないことがあります。
遺言書は公正証書で作成されることを強くお勧めします。
また、(お勧めは出来ませんが)自筆証書遺言の場合は、専門家に内容をチェックしてもらった方が良いでしょう。
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